2017年10月4日水曜日

山口組が3つに割れたことが全国の他団体に波及し、各地で抗争が起きる危険性はあるか?

3つの山口組分裂、稲川会や住吉会など他団体への影響

2017/10/4(水) 11:00配信



六代目山口組から分裂した神戸山口組と、そこから再分裂した任侠山口組の間でついに抗争が勃発。9月12日、神戸市で任侠山口組・織田絆誠代表の乗った車が神戸山口組傘下の組員による襲撃に遭い、ボディガードが射殺された。山口組が3つに割れたことが全国の他団体に波及し、各地で抗争が起きる危険性はあるか。ジャーナリストの溝口敦氏とフリーライターの鈴木智彦氏が語りあった。

鈴木:実際に山口組が3つに割れた影響で、山口組、住吉会(東京)と並ぶ広域暴力団の稲川会(東京)では今年5月、破門された箱屋一家をねらった複数回の銃撃事件が発生しています。

溝口:この事件は任侠山口組が発足した直後に起きた。箱屋一家はもともと神戸山口組、中でも織田代表との関わりが深く、六代目山口組との関係を重視する稲川会の執行部で問題とされ、昨年1月に稲川会を破門されました。その後は神戸山口組が後ろ盾となっていましたが、織田代表が神戸から離脱すると、神戸の庇護がなくなった。そこを狙われたわけです。

鈴木:箱屋一家の中村豪総長と神戸の井上邦雄組長が兄弟分だったため、前線指揮官の織田代表も頻繁に出入りしていました。ところが神戸山口組が再分裂してしまい、友好団体に力を振り向ける余裕がなくなった。

それまで「関東の暴力団は手を出さなくておとなしい」とまで言われていましたが、中村総長が銃撃されたのは松戸署の目の前です。2か月で4度も銃撃事件が起き、稲川会系の組員も逮捕されている。山口組の再分裂が、稲川会の引き金を引いたのでしょう。

溝口:住吉会も組織の重石となってきた西口茂男総裁が9月に亡くなり、求心力の低下が避けられません。

鈴木:二次団体である幸平一家の加藤英幸総長は、住吉会の代紋に加え、幸平一家の代紋も捨てていない。本来なら山口組の「菱」のように、上部団体の代紋だけを使うのが当たり前ですから、もともと独立性が強かった。住吉会は神戸山口組と関係を持たないのに、加藤総長は井上組長と関係が深いから訪問したりもしていました。それでも、西口総裁という重石があったからまとまっていたわけですが。

溝口:住吉会も今後、分裂していく可能性が高い。

鈴木:そもそも今は大組織にいる意味がないんですよね。ほんの10年ほど前までは暴力団も「寄らば大樹の陰」で、地方の暴力団が山口組をはじめ稲川会や住吉会の傘下に入る流れがありましたが、暴排条例によってむしろ「山口組だから警察に狙われる」「身動きが取りづらい」といったマイナス面が増えた。おまけに上納金まで吸い上げられるわけです。「やられてもトップが逮捕されるのが怖くて報復できない」と分かっているので、独立しても怖くなくなってきている。

溝口:松葉会(東京)もすでに分裂状態にあった関東関根組が今年4月に正式に独立しました。

鈴木:もとは松葉会が六代目山口組と親しかったんですが、最後は松葉会と関根組の間を司組長が口を利く形で独立が認められたんですよね。

溝口:そう。それで警察のなかでも「任侠山口組よりも先に関根組を指定暴力団にしたほうがいい」なんて声も上がっている。50人ほどですが、後ろ盾を必要としていない。

──京都でも、今年1月に独立団体の会津小鉄会で分裂騒動が起きた。一定の統制が取れていた状況が崩れ始めているようにも見える。

鈴木:跡目争いがこじれた結果、2つの「七代目会津小鉄会」ができ、双方を六代目側と神戸側が支援する“代理戦争”となって本部事務所で両派の乱闘騒ぎまで起きました。

溝口:今、会津小鉄会の神戸派が苦しいのは、当てにしていた神戸山口組の勢力がほとんど任侠山口組に移ってしまったことですね。任侠山口組の織田代表は他団体と付き合わないことを公言していますから。これが稲川会や会津小鉄会といった他団体の分裂にも影響を及ぼしている。

鈴木:引き金を間接的に引いているのは、間違いなく3つの山口組です。

溝口:もともとヤクザは金の取り合いだから、火種はいくつでもある。山口組の分裂が後付けの理由になっているケースも多く、ひと言では片付けられない複雑な事情があるわけですが。

鈴木:九州の四社会(4団体の親睦団体)は、「六代目とも神戸とも付き合わない」という声明を出している。九州では、一般人を含め14人もの死者を出す抗争を行ない、しかも実行犯が捕まっていない事件も多い。彼らからすれば山口組の抗争は「何やってるんだ」という感じだと思います。

●溝口敦(みぞぐち・あつし)/1942年東京浅草生まれ。早稲田大学政経学部卒。『食肉の帝王』で講談社ノンフィクション大賞を受賞。『暴力団』『続・暴力団』(ともに新潮社)、『ヤクザ崩壊 侵食される六代目山口組』(講談社+α文庫)など著書多数。

●鈴木智彦(すずき・ともひこ)/1966年北海道札幌生まれ。『実話時代』の編集を経てフリーライターへ。『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(文春新書)など著書多数。『全員死刑』(小学館文庫)が11月に刊行予定。

※週刊ポスト2017年10月13・20日号

参照元 : NEWSポストセブン


3つの山口組分裂騒動は今後どうなっていくのか 事情通対談

2017/10/6(金) 7:00配信

六代目山口組から分裂した神戸山口組と、そこから再分裂した任侠山口組の間でついに抗争が勃発。9月12日、神戸市で任侠山口組・織田絆誠代表の乗った車が神戸山口組傘下の組員による襲撃に遭い、ボディガードが射殺された。さらに全国の他団体でも分裂騒動が相次いでいる。3つの山口組の分裂騒動は今後どうなっていくのか。ジャーナリストの溝口敦氏とフリーライターの鈴木智彦氏が語り合った。

溝口:今は六代目は高みの見物でしょう。「痛くも痒くもない。神戸も任侠も大いにやってくれ」という気分ではないか。

鈴木:8月27日、任侠山口組が神戸山口組を批判した記者会見の翌日、神戸山口組は幹部会を開いたものの一切、この会見の話題には触れなかったようです。反論したくても、一つ言おうとすると細部にまですべて反論しなければいけなくなってしまうから、触れられないし、あえて気にしてないというポーズを取る必要があったということです。

そうして両団体が一触即発のなか、さらにその翌日、六代目の司忍組長は名古屋から神戸入りするのにあえてJR新神戸駅に降り立って、わざわざマスコミが待つど真ん中を通った。余裕の気持ちの現われでしょう。

溝口:とはいえ、暴力団は「話題になってなんぼ」という面もある。では、六代目が今世間で話題になっているかというと、全くそうではない。忘れられている状況では、よくて現状維持が精一杯。表面的に見れば安泰でしょうが、「現代に生きていないヤクザ組織」ともいえる。このままでは将来性はないと思う。

鈴木:確かにヤクザは殺して殺されて騒ぎにならないと組織の原動力にならない。抗争こそ力の源なんです。それを騒ぎ立てるマスコミも共犯関係といえるのかもしれません。

しかしその意味で歴史に“if”があるとすれば、もし神戸山口組が2015年8月の分裂後から年内くらいまでの間に、六代目に本気で抗争を仕掛けていたらずいぶん流れは違ったのではないか。神戸内の主戦派は悔しそうにそう言います。分裂直後は溝口さんをはじめ報道の熱が離脱した神戸側にあり、追い風が吹いていたわけですから。

溝口:神戸山口組は発足するにあたり、移籍に難色を示していた入江禎副組長に対し、井上邦雄組長が「荒事(危険なこと)は一切私のところ(出身母体の山健組)でやりますから」と口説いたと言われています。しかし、実態は違って、誰よりも井上組長自身が抗争をやりたがっていない。2016年5月に神戸山口組の池田組若頭が弘道会系組員に射殺されたときの「返し」すらしなかったのは、求心力の低下に繋がったと思います。それで今になってヒットマンを織田代表に向けても、遅いのではないか。

鈴木:ただしもし明日、神戸山口組が任侠山口組の織田代表の命を取れば、流れが逆転する可能性がある。織田代表が目立てば目立つほど、です。

溝口:このまま神戸山口組の求心力が低下していくなら、さらなる離脱を招き、神戸の主要組織を任侠が受け継ぐことになるでしょう。この時、はじめて六代目は任侠と敵対を始めると思います。将来的に任侠山口組と六代目山口組が衝突する構図が見えてくるのではないか。

鈴木:それが神戸、名古屋以外の地域にも波及するかもしれない。まだまだ抗争の先は長そうですね。

●溝口敦(みぞぐち・あつし)/1942年東京浅草生まれ。早稲田大学政経学部卒。『食肉の帝王』で講談社ノンフィクション大賞を受賞。『暴力団』『続・暴力団』(ともに新潮社)、『ヤクザ崩壊 侵食される六代目山口組』(講談社+α文庫)など著書多数。

●鈴木智彦(すずき・ともひこ)/1966年北海道札幌生まれ。『実話時代』の編集を経てフリーライターへ。『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(文春新書)など著書多数。『全員死刑』(小学館文庫)が11月に刊行予定。

※週刊ポスト2017年10月13・20日号

参照元 : NEWSポストセブン



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