2019年8月23日金曜日

指定暴力団山口組と同住吉会の下部団体構成員が特殊詐欺で共闘

特殊詐欺、暴力団が黒い共闘 過去の抗争を度外視、背景に資金源枯渇

2019/8/22(木) 19:34配信

暴力団が積極的な関与を強める特殊詐欺で、異なる組織の組員が協力して犯行に及ぶケースが確認されている。警視庁は6月、同一の詐欺グループを運営していたとされる指定暴力団山口組と同住吉会の下部団体構成員を逮捕。かつて抗争を繰り返した暴力団同士の共闘は資金源の枯渇が背景にあるとされ、警察当局は詐取金への依存度を高める恐れがあるとみて、対策を多角的に練り上げ、組織の弱体化を図る。

「特殊詐欺には関わらないように」。神戸市に本部を置く指定暴力団は今年、下部組織に内部通達を出した。ただ、捜査関係者は「組織の関与を否定する言い分として出したに過ぎない」とみる。組員らが組織をまたいで詐取金に群がる実態が明らかになりつつあるためだ。

警視庁が6月に摘発した特殊詐欺事件で逮捕された指定暴力団山口組弘道会系組員の今裕哉被告(26)=詐欺罪で起訴=と、住吉会幸平一家系組員の柏原勇太容疑者(26)=同罪などで起訴、再逮捕=は同一の詐欺グループの運営に関与していた。

平成初頭のバブル期以降、関東に進出を強めた山口組と、東京が拠点の住吉会はシノギ(資金獲得活動)をめぐって抗争を繰り返した歴史がある。だが、2人は指示役として協力し、それぞれがグループのメンバーに命令。2人は詐取金の約2割を取り分にし、残りをグループで分配していたとみられる。

捜査関係者は「特殊詐欺はぬれ手であわ。食い合うのは得策ではないと判断し、関係性を度外視して現場で『共闘戦線』を組む傾向がある」と分析する。

従来は暴力団が単独で詐欺グループを指揮してきたが、警察当局の取り締まり強化で資金源となる他のシノギ(資金獲得活動)が減ったほか、摘発のリスクが高い受け子やかけ子といった実行役が不足していることも共闘の要因とされる。

不足する実行役を組織間で「融通」するケースも増加。詐欺グループ構築時に、実行犯の一部メンバーの手配を他の暴力団に外注することもあるという。別の特殊詐欺事件で山口組系組幹部のグループにいた受け子には、他の指定暴力団組員が含まれていた。

近年は実行役の行方不明事案や詐取金の持ち逃げが多発するようになり、捜査関係者は「暴力団の威力を利用して引き締めを図っている」と指摘する。

暴力団関係者は「実行役に忠誠心がない」との見方を示し、今被告も組事務所で受け子の顔写真を撮影し、「逃げたらどうなる?」と脅していたという。

警察庁の統計では、平成30年に特殊詐欺で摘発した2747人のうち暴力団構成員らは630人(22・9%)。主犯格でみると53人中24人で45・3%に達した。今年上半期(1~6月)の被害額(暫定値)は146億1千万円で、覚醒剤など違法薬物の売買と並ぶ暴力団の資金源とされる。

特殊詐欺のグループが事前に資産状況や現金の保管場所などを聞き出す「予兆電話(アポ電)」も止まず、警察庁の全国調査で今年4月以降の3カ月間で3万5289件が確認された。政府は6月、詐欺グループに電話番号を販売する悪質な「電話再販業者」の規制に乗り出す方針を固めてもいる。

警察当局は被害金が流れている可能性が高い暴力団本体への攻勢も強める。警視庁は6月、特殊詐欺事件に絡んで山口組弘道会本部(名古屋市中村区)を初めて家宅捜索。警察幹部は「犯行ツールを締め付けるとともに突き上げ捜査を進め、暴力団に対する打撃を与えていきたい」と話している。

参照元 : 産経新聞

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