裏社会で月額200万円以上稼ぐ「道具屋」の仕事とは
2018.08.15 16:00
スマホの保有率が国民の7割を超え、それにつれて近年、大きな変化を見せている裏社会。その変化を知るのに注目すべき存在が「道具屋」という裏稼業だ、と語るのは、「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中の『ハスリンボーイ』原作を担当する草下シンヤ氏だ。この“ハスリン”という言葉は「非合法商売」を指す。『裏のハローワーク』を始めとする裏社会をテーマとした著書を執筆してきた草下氏が、今の【裏社会リアル】をレポートする。
今年2018年上半期(1~6月)、全国の警察が把握した振り込め詐欺、オレオレ詐欺などの特殊詐欺の被害額は174億9000万円、認知件数は8197件にのぼる。そのうち、身内などを装うオレオレ詐欺は22.7%増の4560件(被害額96億3000万円)と大幅に増え、警察庁は「深刻な状況」と警戒を強めている。
これほど世間での特殊詐欺の認知が高まっているにもかかわらず、いまだに騙されてしまう被害者がいる中、近年「道具屋」という呼ばれる存在がクローズアップされている。道具屋とは、裏社会の犯罪グループ向けに「トバシやレンタルの携帯」(トバシは使い捨て、レンタルは一定期間使用できる足のつかない携帯)や「架空口座」(犯罪用の架空名義の銀行口座)といった身元を隠すためのツールを不正調達する者のことだ。
道具屋の中には、詐欺グループが自前で非合法ツールを用意するために作った専属の道具屋もいるが、一匹狼として裏社会で生計を立てる者もいる。そういったフリーの道具屋は元闇金業者だったり、現在も闇金業を兼業していたり、裏風俗、暴力団組織に太いパイプを持つなどしている。
かつては、裏社会における道具屋は、それほど地位の高いポジションではなく、依頼人からの厄介な要求に翻弄される、いわば下っ端的な役割に過ぎなかった。しかし、そんな道具屋が存在感を強めている背景には「犯罪の不可視化」があるといえる。
十数年前から流行し始めた特殊詐欺はマイナーチェンジを繰り返しながら現在も、巨大な犯罪規模を誇っている。ただし、当局も詐欺事件の厳罰化を進めており、10年前であれば執行猶予がついたような案件も、初犯で実刑が下されるようになってきている。
詐欺というものは、そもそも「見えにくい犯罪」である。たとえば、「被害総額○○億円」という詐欺事件があり、実行犯を逮捕したとしても、物的証拠を示し、事件化できるものは限られている。被害総額10億円の詐欺事件があったとしても、実際に事件化できるのは数千万円に過ぎないということが多い。
そしてまさにその「物的証拠をなくす」ためには、トバシやレンタルの携帯や、架空口座などのツールが必須なのだ。一昔前の“逮捕されることでハクがつく昭和の時代”とは違って、“逮捕されれば貧乏になる現在”において、いかに自分たちの姿を隠すかということは、犯罪をおかす者にとって「最重要な部分」となっているわけだ。
たとえば、私の友人の山崎(40歳・仮名)は池袋でフリーの道具屋として活動していた。メジャーリーグで活躍中の田中投手の肌をこんがりと焼き、眼光を鋭くしたような風体の人物だ。彼に「なぜ道具屋の仕事を始めたのか」を聞いたことがある。
「大学を卒業後、探偵会社に入ったんだけど、そこがブラック企業だったんだよね。そこを短期間でバックレて、そのときイケイケだった闇金業界に入った。そこはうまくいっていたんだけど、タタキ(※強盗)に遭って全部失っちゃって……。その後で始めたのが、闇金時代に作っていた裏のネットワークを使った道具屋だったんだよね」
山崎が扱っていた禁制品は、主に「トバシの携帯」「レンタル携帯」「架空口座」「違法薬物」などである。
「道具屋はね、犯罪ネットーワークのスクランブル交差点みたいなもんだよね。ヒトとモノ、そしてヒトとヒトをつないでそれを金にする。そんなところにもこの仕事の面白さがあったかな」
道具屋というと、モノを扱っているだけのイメージが浮かぶが、実際は裏社会の何でも屋といった側面もあるようだ。強力なネットワークを持つ道具屋のもとには、さまざまなヒト、事件、ビジネス、モノ、情報などが集まってくる。そのネットワークそのものが道具屋の力であり、商売のタネになるのだろう。
その結果、山﨑は池袋で暴力団、半グレ集団から一目置かれる存在として活動し、全盛期には月に200万円以上の稼ぎを得て、頻繁にハイブランドの洋服や財布を買い替えたり、後輩を引き連れてキャバクラに通ったりするような羽振りの良い生活を送っていた、という。
このような道具屋がいるから犯罪はなくならないとも言えるし、一方で犯罪グループの必要が生み出した「今の犯罪を象徴する存在」──それが道具屋なのだ。
今年4月には、警視庁サイバー犯罪対策課と福島、群馬両県警が、仮想通貨口座を他人の情報で不正開設した私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで、中国籍の会社役員が逮捕しているが、その容疑者は「犯罪グループ向けに口座などを不正調達する道具屋」とみられて、取り調べを受けているという。
世の中の流行に合わせて、シノギを見つけ出していく彼らの動向を追うことで、新たな犯罪の姿が見えてくるのは間違いない。
【PROFILE】草下シンヤ/1978年、静岡県出身。豊富な人脈を活かした裏社会取材を得意とし、『実録ドラッグレポート』『裏のハローワーク』などの著作がある。現在「週刊ビッグコミックスピリッツ」にて『ハスリンボーイ』(原作担当/漫画・本田優貴氏)を連載中。第1話試し読み Twitterアドレス
参照元 : NEWSポストセブン
「道具屋」が手掛ける裏社会への人材派遣とそのニーズ
2018.08.19 16:00
「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中の『ハスリンボーイ』(“ハスリン”という言葉は「非合法商売」を指す)原作を担当する草下シンヤ氏が題材に選んだのは、「道具屋」という裏稼業。裏社会のパイプ役とも呼ばれるこの仕事をなぜ選んだかと言えば、その裏稼業を通して、さまざまな“裏のニーズ”が見えてくるからだという。その内実について、草下氏がレポートする。
今年4月、携帯電話の通話に必要なSIMカードを不正に譲り渡したとして、警視庁捜査2課は携帯電話不正利用防止法違反で、2人を逮捕した。昨年3月以降、2人が扱ったSIMカードを使った詐欺事件が全国で少なくとも十数件はあり、被害額は6000万円以上。捜査2課は、犯罪グループへの他人名義のSIMカードを供給する「道具屋」として、入手経路を調べているという。
このような事件は氷山の一角に過ぎない。しかも道具屋は、この事件のように足がつかない携帯や架空口座などの「モノ」を用意して取引相手に渡すだけではなく、さまざまな裏の業務のために「ヒト」を斡旋することもあるという。レポート第1回(8月15日配信)で紹介したフリーの道具屋である私の友人の山崎(40歳・仮名)にさらに話を聞いた。
「まず依頼があるとすれば、出し子や掛け子の斡旋なんかがあるよね」
特殊詐欺の「出し子」(振り込め詐欺で口座に振り込まれたお金を引き出す役割の者)や「掛け子」(振り込め詐欺などで電話をかけてだます役割の者)の斡旋では、紹介した人間が稼いだ金額の何パーセントかが支払われる。また、1人あたりいくらという取り決めで紹介し、報酬を得るやり方もある。知人の暴力団員などから「今度、こういうヤマがあるんだけど何人か手配してくれないか?」などと依頼されるという。
今年5月29日までに警視庁組織犯罪対策4課が、金融庁職員や警察官らを装って、埼玉県の80歳女性ら4人から現金を詐取した容疑などで17人を逮捕。そのうちの一部が調べに対して、指定暴力団山口組の2次団体幹部にだまし取った金が流れていると供述したため、2次団体事務所に詐欺などの疑いで家宅捜索が入った。17人の大半は詐欺電話の「掛け子」で、この組の幹部らが統括役だった疑いがあるとみているという。
もちろん、この事件に彼が関係しているわけではないが、その17人がどのように集められたかと言えば、山崎のような存在が暗躍していたに違いない。
「他に俺が小遣い稼ぎでやっていたのは、“偽装結婚の紹介”や“運びの斡旋”だね。誰か人いない?って聞かれれば、それに対応してあげるのが俺のやり方だったよ」
偽装結婚の紹介…。巨大繁華街を有する池袋にはさまざまな素性を持った人間が集まる。その中には日本人の国籍を欲しがる外国人も多い。借金の債務者などに持ち掛ければ、条件次第で婚姻は成立する。偽造結婚のブローカーに“新郎”を紹介し、20〜30万円の報酬を得る。
また、「運び」というのは薬物を海外から密輸する人間のことを指している。たとえば、マリファナが合法化されているアメリカのカリフォルニア州に行き、大量に仕入れる。それをコンドームに詰めて飲み込んだり、肛門に押し込んで日本に運び込むボディパッキングは昔から続く手法である。
運びではなく、「送り」という仕事もある。これは電化製品や美術品、家具などに薬物を隠し、日本に空輸するものだ。
アメリカは入国の際は異常なほど厳しいチェックを受けるが、出国の際はザルといってもいい。そのため、アメリカから運び・送りをする際は日本の税関をいかにすり抜けるかということに留意する。
たとえば全身にタトゥーが入っていたり、いかにも裏社会の臭いをプンプンさせた者などは警戒されるが、一般旅行客はスルーされる可能性が高い。運び・送りを行なう者は50〜100万円ほどの報酬を手にし、山崎には10〜20万円の紹介料が入る。
山崎の口からは次々に裏社会の人材派遣業の実体が浮かび上がる。私は他にヤバい斡旋の話はないかと聞いた。
「先に言っておくけど、これは俺が手がけた仕事じゃない。知り合いの1人が飯場仕事の斡旋やってるんだけど、相当ブラック。1人いくらで引っ張ってきて、山奥の工事現場に送り込む。まあ、そこまではよくある話だけど、そいつの身体が壊れて使い物にならなくなれば、そのまま背中を押して……。そこに保険金なんかも絡むって話だよ」
借金で首が回らなくなったり、警察から追われていたりして、表社会に居場所がなくなった人間は裏社会ではまるで“モノ”のように扱われる。くれぐれも山崎のような人間に値段をつけられるような生き方をしてはならないのである。
【PROFILE】草下シンヤ/1978年、静岡県出身。豊富な人脈を活かした裏社会取材を得意とし、『実録ドラッグレポート』『裏のハローワーク』などの著作がある。現在「週刊ビッグコミックスピリッツ」にて『ハスリンボーイ』(原作担当/漫画・本田優貴氏)を連載中。第1話試し読み Twitterアドレス
参照元 : NEWSポストセブン
2018.08.15 16:00
スマホの保有率が国民の7割を超え、それにつれて近年、大きな変化を見せている裏社会。その変化を知るのに注目すべき存在が「道具屋」という裏稼業だ、と語るのは、「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中の『ハスリンボーイ』原作を担当する草下シンヤ氏だ。この“ハスリン”という言葉は「非合法商売」を指す。『裏のハローワーク』を始めとする裏社会をテーマとした著書を執筆してきた草下氏が、今の【裏社会リアル】をレポートする。
今年2018年上半期(1~6月)、全国の警察が把握した振り込め詐欺、オレオレ詐欺などの特殊詐欺の被害額は174億9000万円、認知件数は8197件にのぼる。そのうち、身内などを装うオレオレ詐欺は22.7%増の4560件(被害額96億3000万円)と大幅に増え、警察庁は「深刻な状況」と警戒を強めている。
これほど世間での特殊詐欺の認知が高まっているにもかかわらず、いまだに騙されてしまう被害者がいる中、近年「道具屋」という呼ばれる存在がクローズアップされている。道具屋とは、裏社会の犯罪グループ向けに「トバシやレンタルの携帯」(トバシは使い捨て、レンタルは一定期間使用できる足のつかない携帯)や「架空口座」(犯罪用の架空名義の銀行口座)といった身元を隠すためのツールを不正調達する者のことだ。
道具屋の中には、詐欺グループが自前で非合法ツールを用意するために作った専属の道具屋もいるが、一匹狼として裏社会で生計を立てる者もいる。そういったフリーの道具屋は元闇金業者だったり、現在も闇金業を兼業していたり、裏風俗、暴力団組織に太いパイプを持つなどしている。
かつては、裏社会における道具屋は、それほど地位の高いポジションではなく、依頼人からの厄介な要求に翻弄される、いわば下っ端的な役割に過ぎなかった。しかし、そんな道具屋が存在感を強めている背景には「犯罪の不可視化」があるといえる。
十数年前から流行し始めた特殊詐欺はマイナーチェンジを繰り返しながら現在も、巨大な犯罪規模を誇っている。ただし、当局も詐欺事件の厳罰化を進めており、10年前であれば執行猶予がついたような案件も、初犯で実刑が下されるようになってきている。
詐欺というものは、そもそも「見えにくい犯罪」である。たとえば、「被害総額○○億円」という詐欺事件があり、実行犯を逮捕したとしても、物的証拠を示し、事件化できるものは限られている。被害総額10億円の詐欺事件があったとしても、実際に事件化できるのは数千万円に過ぎないということが多い。
そしてまさにその「物的証拠をなくす」ためには、トバシやレンタルの携帯や、架空口座などのツールが必須なのだ。一昔前の“逮捕されることでハクがつく昭和の時代”とは違って、“逮捕されれば貧乏になる現在”において、いかに自分たちの姿を隠すかということは、犯罪をおかす者にとって「最重要な部分」となっているわけだ。
たとえば、私の友人の山崎(40歳・仮名)は池袋でフリーの道具屋として活動していた。メジャーリーグで活躍中の田中投手の肌をこんがりと焼き、眼光を鋭くしたような風体の人物だ。彼に「なぜ道具屋の仕事を始めたのか」を聞いたことがある。
「大学を卒業後、探偵会社に入ったんだけど、そこがブラック企業だったんだよね。そこを短期間でバックレて、そのときイケイケだった闇金業界に入った。そこはうまくいっていたんだけど、タタキ(※強盗)に遭って全部失っちゃって……。その後で始めたのが、闇金時代に作っていた裏のネットワークを使った道具屋だったんだよね」
山崎が扱っていた禁制品は、主に「トバシの携帯」「レンタル携帯」「架空口座」「違法薬物」などである。
「道具屋はね、犯罪ネットーワークのスクランブル交差点みたいなもんだよね。ヒトとモノ、そしてヒトとヒトをつないでそれを金にする。そんなところにもこの仕事の面白さがあったかな」
道具屋というと、モノを扱っているだけのイメージが浮かぶが、実際は裏社会の何でも屋といった側面もあるようだ。強力なネットワークを持つ道具屋のもとには、さまざまなヒト、事件、ビジネス、モノ、情報などが集まってくる。そのネットワークそのものが道具屋の力であり、商売のタネになるのだろう。
その結果、山﨑は池袋で暴力団、半グレ集団から一目置かれる存在として活動し、全盛期には月に200万円以上の稼ぎを得て、頻繁にハイブランドの洋服や財布を買い替えたり、後輩を引き連れてキャバクラに通ったりするような羽振りの良い生活を送っていた、という。
このような道具屋がいるから犯罪はなくならないとも言えるし、一方で犯罪グループの必要が生み出した「今の犯罪を象徴する存在」──それが道具屋なのだ。
今年4月には、警視庁サイバー犯罪対策課と福島、群馬両県警が、仮想通貨口座を他人の情報で不正開設した私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで、中国籍の会社役員が逮捕しているが、その容疑者は「犯罪グループ向けに口座などを不正調達する道具屋」とみられて、取り調べを受けているという。
世の中の流行に合わせて、シノギを見つけ出していく彼らの動向を追うことで、新たな犯罪の姿が見えてくるのは間違いない。
【PROFILE】草下シンヤ/1978年、静岡県出身。豊富な人脈を活かした裏社会取材を得意とし、『実録ドラッグレポート』『裏のハローワーク』などの著作がある。現在「週刊ビッグコミックスピリッツ」にて『ハスリンボーイ』(原作担当/漫画・本田優貴氏)を連載中。第1話試し読み Twitterアドレス
参照元 : NEWSポストセブン
「道具屋」が手掛ける裏社会への人材派遣とそのニーズ
2018.08.19 16:00
「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中の『ハスリンボーイ』(“ハスリン”という言葉は「非合法商売」を指す)原作を担当する草下シンヤ氏が題材に選んだのは、「道具屋」という裏稼業。裏社会のパイプ役とも呼ばれるこの仕事をなぜ選んだかと言えば、その裏稼業を通して、さまざまな“裏のニーズ”が見えてくるからだという。その内実について、草下氏がレポートする。
今年4月、携帯電話の通話に必要なSIMカードを不正に譲り渡したとして、警視庁捜査2課は携帯電話不正利用防止法違反で、2人を逮捕した。昨年3月以降、2人が扱ったSIMカードを使った詐欺事件が全国で少なくとも十数件はあり、被害額は6000万円以上。捜査2課は、犯罪グループへの他人名義のSIMカードを供給する「道具屋」として、入手経路を調べているという。
このような事件は氷山の一角に過ぎない。しかも道具屋は、この事件のように足がつかない携帯や架空口座などの「モノ」を用意して取引相手に渡すだけではなく、さまざまな裏の業務のために「ヒト」を斡旋することもあるという。レポート第1回(8月15日配信)で紹介したフリーの道具屋である私の友人の山崎(40歳・仮名)にさらに話を聞いた。
「まず依頼があるとすれば、出し子や掛け子の斡旋なんかがあるよね」
特殊詐欺の「出し子」(振り込め詐欺で口座に振り込まれたお金を引き出す役割の者)や「掛け子」(振り込め詐欺などで電話をかけてだます役割の者)の斡旋では、紹介した人間が稼いだ金額の何パーセントかが支払われる。また、1人あたりいくらという取り決めで紹介し、報酬を得るやり方もある。知人の暴力団員などから「今度、こういうヤマがあるんだけど何人か手配してくれないか?」などと依頼されるという。
今年5月29日までに警視庁組織犯罪対策4課が、金融庁職員や警察官らを装って、埼玉県の80歳女性ら4人から現金を詐取した容疑などで17人を逮捕。そのうちの一部が調べに対して、指定暴力団山口組の2次団体幹部にだまし取った金が流れていると供述したため、2次団体事務所に詐欺などの疑いで家宅捜索が入った。17人の大半は詐欺電話の「掛け子」で、この組の幹部らが統括役だった疑いがあるとみているという。
もちろん、この事件に彼が関係しているわけではないが、その17人がどのように集められたかと言えば、山崎のような存在が暗躍していたに違いない。
「他に俺が小遣い稼ぎでやっていたのは、“偽装結婚の紹介”や“運びの斡旋”だね。誰か人いない?って聞かれれば、それに対応してあげるのが俺のやり方だったよ」
偽装結婚の紹介…。巨大繁華街を有する池袋にはさまざまな素性を持った人間が集まる。その中には日本人の国籍を欲しがる外国人も多い。借金の債務者などに持ち掛ければ、条件次第で婚姻は成立する。偽造結婚のブローカーに“新郎”を紹介し、20〜30万円の報酬を得る。
また、「運び」というのは薬物を海外から密輸する人間のことを指している。たとえば、マリファナが合法化されているアメリカのカリフォルニア州に行き、大量に仕入れる。それをコンドームに詰めて飲み込んだり、肛門に押し込んで日本に運び込むボディパッキングは昔から続く手法である。
運びではなく、「送り」という仕事もある。これは電化製品や美術品、家具などに薬物を隠し、日本に空輸するものだ。
アメリカは入国の際は異常なほど厳しいチェックを受けるが、出国の際はザルといってもいい。そのため、アメリカから運び・送りをする際は日本の税関をいかにすり抜けるかということに留意する。
たとえば全身にタトゥーが入っていたり、いかにも裏社会の臭いをプンプンさせた者などは警戒されるが、一般旅行客はスルーされる可能性が高い。運び・送りを行なう者は50〜100万円ほどの報酬を手にし、山崎には10〜20万円の紹介料が入る。
山崎の口からは次々に裏社会の人材派遣業の実体が浮かび上がる。私は他にヤバい斡旋の話はないかと聞いた。
「先に言っておくけど、これは俺が手がけた仕事じゃない。知り合いの1人が飯場仕事の斡旋やってるんだけど、相当ブラック。1人いくらで引っ張ってきて、山奥の工事現場に送り込む。まあ、そこまではよくある話だけど、そいつの身体が壊れて使い物にならなくなれば、そのまま背中を押して……。そこに保険金なんかも絡むって話だよ」
借金で首が回らなくなったり、警察から追われていたりして、表社会に居場所がなくなった人間は裏社会ではまるで“モノ”のように扱われる。くれぐれも山崎のような人間に値段をつけられるような生き方をしてはならないのである。
【PROFILE】草下シンヤ/1978年、静岡県出身。豊富な人脈を活かした裏社会取材を得意とし、『実録ドラッグレポート』『裏のハローワーク』などの著作がある。現在「週刊ビッグコミックスピリッツ」にて『ハスリンボーイ』(原作担当/漫画・本田優貴氏)を連載中。第1話試し読み Twitterアドレス
参照元 : NEWSポストセブン
ハスリンボーイめっちゃ面白い。— かずま@カルライ当選祈願 (@kazuma_kinoko) 2018年8月2日
裏社会の道具屋が主人公とか着眼点凄すぎる。 pic.twitter.com/LUfBwVb8wn
若者のお金離れが話題だが、ビッグコミックスピリッツで今日から新連載の「ハスリンボーイ」は奨学金の返済を学生のうちに終わらせるために裏社会の道具屋を営む大学生の話でタイムリー。— 地獄とはℒℴ𝓋ℯの不在なり (@Mekajiki) 2018年5月7日
初回は薬物がキマったヤクザのクレーム電話を7時間受け流し続けて楽しみにしていたコンパをブッチする話。。 pic.twitter.com/dvSwtbGJwO
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