2017年12月20日水曜日

金塊の密輸でヤクザや外国人がボロ儲け!

「金塊密輸天国」日本でヤクザや外国人がボロ儲け!米兵による強奪疑惑も

2017/12/20(水) 6:00配信

▼米兵が「(空爆後の)シリアから強奪した」と言う金塊



コインに裏表があるように、経済にも公式な経済と、金額さえ容易には把握できない「地下経済」がある。しかもこの地下経済は世界的に膨張の一途をたどっており、英国やアイルランド、イタリアはその一部をGDPに算入しているほどだ。そこで、DOL特集「地下経済の深淵」では、さまざまな現場を取材し、地下経済の今に迫る。第1回は金塊の密輸だ。(ダイヤモンド・オンライン編集部「地下経済問題取材班」)

●「金塊が手に入った」と突然の連絡 780万円で買い取り1400万円で売却

「金塊が手に入った。買い取ってもらえないか」

今年6月、関東地方で貿易業を営んでいる男性の元に、1本の連絡が入った。

この貿易商の男性は、一時期、暴力団とつながりがあり、表の世界だけでなく、裏の世界にもさまざまな人脈を持つ人物。そんな貿易商に相談を持ち掛けたのは、米国人女性のナターシャ・デビット(仮名)。過去に面識があり、Facebookを使って突然、連絡してきたという。

面識があるとはいえ、それはかなり以前の話。しかも、いきなり、「金塊を買い取ってくれ」という怪しげな話を持ち掛けられ、貿易商は疑った。同様の話を持ち掛けられた人たちが、カネを振り込んだにもかかわらず、送られてきたのは金塊ではなくガラクタばかり、といった詐欺に遭う被害が相次いでいただけに、なおさらだった。

ナターシャ側もそうした事情を承知してか、手元にある金塊や税関の書類を撮った写真を送ってきて「詐欺ではない」と猛アピール、ついには自身の写真や身分証明書の写真まで送ってきた。

そうしたやり取りもあって、貿易商は、「ならば、本物か確かめるために、まずはサンプルとして100オンスバー(3.1キログラム)を保険に入れた上で送れ。7万ドル(約780万円)で買い取る」と返事をし、海外送金する際に使用する国際的な送金メッセージ(支払い指図)のSWIFTを使ってカネを送金した。

しばらくして送金を確認したナターシャは、指示通り100オンスバーの金塊を送ってくる。棒状になっている金塊は、種類や純度、国がその品位を保証する「ホールマーク」という刻印のないものだった。そのため貿易商は、大手貴金属業者に持ち込んで鑑定を受けたところ、本物であることが判明。すぐさま知り合いの業者に頼んで精錬し、金塊にホールマークを打刻して1400万円で売却したという。

その後、ナターシャは、「同様の金塊がとりあえず手元に38キログラムある。日本で換金してほしい」とさらに話を持ち掛けてくる。現在、金の買い取り価格は、1グラム5000円程度。38キログラムといえば、ざっと1億9000万円以上に上る。金塊が本物だと確認した貿易商は、ナターシャの話に乗ることにし、ひとまず12.5キログラムを密輸することにした。

●相次ぐ金塊密輸の背景に 消費税が丸もうけになる税制

金塊をめぐっては、昨今、密輸事件が相次いで摘発されるなど、密輸が急増している。背景にあるのは日本の「税制」だ。

簡単に説明しよう。多くの国で金の取引は、基本的に無税だ。ところが、日本では売買時に消費税がかかる。海外から持ち込む場合、入国時に消費税8%を納め、売却時には同額を上乗せした金額が支払われる。また、金を海外に持ち出す場合には8%分が還付される。

つまり、密輸した金を国内で売り払えば、消費税分が“丸もうけ”になるというわけだ。例えば、100グラムの金塊を海外で500万円で購入、密輸して国内で売却したとすると、それだけで40万円のもうけとなる計算だ。

しかも、日本の税関はチェックが甘く、罰則も世界的に見て甘い。

まず、事案がそこまで悪質でなかったり、量が少なかったりした場合、税関は刑事事件として告発せず、「通告処分」で済ませてしまう。たとえ処分を受けたとしても、罰金と、支払うはずだった消費税を納めれば、それでおしまいだ。

しかも、他国のように持ち込んだ金は没収されない。だから持ち込んだ金を売却して、消費税分などさえ支払ってしまえば、残金はすべて手元に残るというわけだ。

こうした日本の現状は、裏社会では有名な話。ナターシャにしろ、貿易商にしろ、そうした日本の“弱点”は知り尽くしていた。問題は、どうやって日本に持ち込むかだった。

今、インターネットの掲示板には「運搬のアルバイトしませんか?年齢性別不問です」「海外旅行に行って簡単な仕事をしませんか」といった書き込みがあふれている。実はこれ、金塊の運び屋を募るための“誘い水”なのだ。

事情に詳しいある暴力団幹部は、「報酬は1キログラム当たり2万円程度。『タダで海外に行かせてくれて、小遣いまで稼げるなら』と、暇な学生や主婦などが飛び付いてくる」と言い、「中身が金塊とは言わず、単に荷物を運んでくれと言うだけ。そんな事情を知らないバイトを何人も雇い、分散して持ち込ませるのだ」と明かす。

一方で、台湾から関西国際空港に向かっていた格安航空会社バニラ・エアのトイレの壁から、六つの袋に小分けした数十キロの金塊が発見されたり、金の延べ棒3キログラムを足の裏などに隠していた男が福岡空港で逮捕されるなど、大胆な手口も目立っている。

だが、貿易商たちはもっと確実に、そして大量に持ち込む手段を知っていた。彼らが目を着けたのは、「外交官」だった。

外交官には外交特権があり、外交官が携行する「外交封印袋」は、外交関係条約第40条により“不可侵”とされるため、空港における保安検査・税関検査でも開く必要がない。つまり、全くのノーチェックですり抜けることができるわけだ。

「外交官がそんな危ないことをするはずがない」と思われる読者も多いだろう。ところがどっこい、裏社会に詳しいある元暴力団関係者は、「貧しい国の外交官たちは、カネさえ渡せば何でも平気でやる。金だけでなく、クスリ(覚醒剤)や拳銃など何でも運んでくれるよ。先進国の外交官であっても、“小遣い”欲しさに食いつく奴らは少なくない」と打ち明ける。

ナターシャらは、日本と国交を結んでいる後進国の外交官を買収、金のインゴット(延べ棒)を運ばせて成田空港で受け取り、まんまと持ち込みに成功する。

その後、貿易商は素早く行動する。今回は本物と分かっているため、知り合いの質屋を通じて、どんな仕事でも引き受ける金属加工業者に依頼、金塊を潰してナゲット状に加工する。ナゲットであれば金融庁への届け出なくて済むし、小分けにした方がインゴットよりも流通させやすく、すぐにさばけるからだ。

加工した金のナゲットを、事情を知っている取扱業者に売却。当然、消費税分を上乗せしてもらってだ。こうして貿易商は、関係者に対する支払い分を差し引き、約3700万円の利益を手にしたという。当然、ナターシャも大きな利益を手にしていた。

●米兵がシリアを空爆後に 民家や銀行から金塊を強奪か

ただ、驚くのはまだ早い。

ナターシャは、サンプルとして100オンスバーを送ってきた際、貿易商に対して「金塊のバーは全部で99個ある」と話し、「仲間たちで分け、自分の取り分は38キログラムだった」と打ち明けていた。

一体、それだけの大量の金塊をどこで手に入れたのか。それは、ナターシャの素性を知ると見えてくる。

じつは、ナターシャは米軍に所属する女性兵士だった。しかも、貿易商に話を持ち掛けてくる少し前、シリアにいたのだ。

今年4月6日、トランプ米大統領は、シリアのアサド政権が国際条約で使用が禁止されているサリンなどの化学兵器を使用した空爆を行い、多数の死者が出たと非難、米軍に攻撃を命じた。 

これを受けて米軍は、地中海に展開していた海軍の艦船から、シリアの空軍基地に向けて59発の巡航ミサイル「トマホーク」を発射。シリア政府軍によれば、この攻撃によって市民6人が死亡したという。

ただ、トランプ大統領は、あくまで空軍基地に限定した攻撃だとし、「シリアには入らない」としていた。

ところがである。ナターシャ曰く、「空爆後、米軍はシリアに入った」と言い、「空爆によって崩壊した民家や金融機関などから、保管してあった金塊を仲間たちと一緒に強奪した」と言うのだ。

金塊は当然、金庫や厳重な保管庫などに保存されていた。しかし、それが米軍の攻撃によって無残にも崩れ落ち、容易に持ち帰ることができたというのだ。

確かに、ナターシャの送ってきた写真を見ると、そこには大量の金塊が無造作に積み上げられている。これらはすべて強奪してきたもの。つまり、米兵はシリアで、“火事場泥棒”をしていたわけだ。

元暴力団関係者で、事情に詳しい関係者によれば、「なにもシリアだけの話ではない。湾岸戦争でも、他の戦争でも火事場泥棒はあった。現に、戦争のたびに強奪したモノを買ってくれという相談が寄せられ、さばいてやってかなり儲けさせてもらっている。戦争なんてそんなものだ」と明かす。

しかしナターシャは、この取引を最後に連絡が途絶える。貿易商は当初の条件通り支払い、かなりの儲けを手にしたにもかかわらずだ。しかも、手元にはまだ金塊があったはず。だが、その後の消息は分からない。

●パレルモ条約未締結で 世界的にもまれな“犯罪天国”

こうした金塊の密輸事件は後を絶たない。財務省の資料によると、2015年度(15年7月~16年6月)の全国の摘発件数は294件。重さは約1.7トンに達する。増え始めたのは2014年から。消費税が8%に引き上げられたことがきっかけだ。

脱税額は、前年度と比べて約2.6倍の約6億1000万円と過去最高を記録。ただ、「金の密輸の成功率は95%」とも言われており、それが正しいとすれば、実際の脱税額は100億円を超える計算となる。

そういう意味で、まさに日本は“金の密輸天国”。前述したように税制を始め、取り締まりや罰則の甘さなども理由だが、「それだけではない。パレルモ条約を締結していない日本は世界有数の犯罪天国だ」と元暴力団関係者は明かす。

パレルモ条約──。日本では「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」と呼ばれるもの。簡単に言えば、組織的な犯罪集団への参加・共謀や、犯罪収益のマネーロンダリング、司法妨害、公務員による汚職などの処罰、およびそれらへの対処措置などについて定める国際条約のことだ。

今夏、国会で議論されていたいわゆる“共謀罪法案”、組織犯罪処罰法改正案は、じつは、このパレルモ条約を締結したいというのが最大の目的だった。

パレルモとは、マフィアの実態を描いた映画「ゴッドファーザー」の舞台で有名なイタリア・シチリア島の街の名前。マフィアによる暗殺事件がきっかけで、組織による犯罪を国際的に取り締まろうという目的で作られた条約だ。

じつは、国連加盟国の94%にあたる187の国と地域が締結しているのだが、日本を含めた11ヵ国だけが締結していないのだ。

パレルモ条約を締結するメリットは、大きくいって二つある。一つ目は、「捜査情報の共有がスムーズになる」こと。これまで、警察や検察といった捜査機関が海外の捜査機関に情報提供や情報共有を求める場合、外務省を通じて行う必要があった。しかし、条約を結べば、ほぼ直接やり取りができるようになる。

そして、もう一つは、「犯罪者の引き渡しがより確実に受けられるようになる」こと。例えば、日本で組織犯罪を犯した犯罪者が海外に逃亡した場合、その国と犯罪者の「引き渡し条約」を結んでいなければ拒否されるケースもあった。それが、条約を結べばそれを根拠に引き渡しが受けられるようになる。

だが、裏返せば、パレルモ条約を結んでいない現在は、「捜査情報を各国と共有できず、しかも犯罪者の引き渡しさえ拒否されることがある」ということになり、「まさに日本はガラパゴス。マフィアや組織犯罪グループ、引いてはテロリストたちから見れば日本は“天国”で、世界中から狙われていた」と元暴力団幹部は明かす。

そうした背景に加えて、2020年に東京五輪を控えていることもあって、政府は条約締結はテロ対策の観点から不可欠だとし、共謀罪法案の可決を目指していたのだ。

これに対し、当時の野党側も、パレルモ条約の締結自体には反対していなかった。ただ、「組織的犯罪集団」の定義が曖昧で「市民が対象になるのではないか」「1億総監視社会につながる」などと批判していて廃案を求めていた。
 
結果的には、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法は成立したが、12月9日から始まる臨時国会において、立憲民主党や民進党が「廃止法案」を提出するなど、まだまだパレルモ条約締結への道のりは平坦ではなさそうだ。

「イデオロギーなどが絡んで対立しているのは分からないではないが、そんなことはどうでもいいこと。ちんたらやっている間、日本はずっと犯罪者からいいようにされるだけだ。どちらが国益にかなうのか、政治家はよく考えた方がいい」

元暴力団幹部はこのように語った上で、こう付け加えた。

「ま、俺たちにとったら、今のような状況が続いた方が、いろんなことができて助かるんけどね」

ダイヤモンド・オンライン編集部

参照元 : ダイアモンドオンライン


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