2017年11月1日水曜日

山口組総本部でハロウィン 子どもたちに菓子を配る

山口組のハロウィン、厳戒態勢の中ではしゃぐ子どもたち(上)

2017/11/4(土) 6:00配信



今年も開催された山口組によるハロウィンのお菓子配り。子どもと組員がハイタッチをして写真に収まる…和やかに見える光景だが、周囲に目をやれば私服警官とマスメディアだらけ。なんとも異様な雰囲気は、戦後の一時期、山口組とともに発展してきた神戸という街の特性をよく表している。(取材・文・撮影/フリージャーナリスト 秋山謙一郎)

● 開催が危ぶまれていたが… 山口組総本部に殺到する子どもたち

「本部や!本部でやってんで!!」――。

10月31日ハロウィンの日、16時頃。神戸の高級住宅地として知られる神戸市灘区篠原本町にある神戸護国神社前公園に大声が響いた。

その瞬間、公園で遊ぶ子どもと母親たち、そして報道関係者と思われる大人たちが、「わーっ」と歓声を上げながら、子どもの足でも走って3分もしない場所にある、日本最大の指定暴力団組織・山口組総本部の駐車場を目がけて一目散に走っていく。

長年、開催されるたびに大きな話題になる“山口組さんのハロウィン”。この付近に住む住民なら誰でも知っていることだが、よくニュース映像で伝えられる総本部の玄関口ではなく、駐車場で行われてきた。だから地元民は皆、山口組総本部の駐車場へと走るのだ。

普段は固く閉ざされている山口組総本部駐車場のシャッター。だが、この日は特別だ。シャッターは開かれ、ハロウィンを祝うオブジェや飾り物、そして地域の子どもたちのために用意したハロウィンのお菓子が、ズラリと簡易テーブル上に並べられている様子が遠目からでもわかる。

兵庫県警の捜査関係者によると、その数、「およそ1000個」。地域の子どもたち全員が来ることを想定したものだという。シャッターの開いた駐車場内では、「ハッピー・ハロウィン!」という山口組関係者の声。そして、子どもたちの「トリック・オア・トリート」という声がこだまする。

その様子は、事情を知らない人が見れば、地元企業が地域の子どもたちにハロウィンでお菓子を振る舞っているとしか映らないだろう。

仮装した大勢の子どもたち、そして母親たちは皆、笑顔でハロウィンのお菓子を受け取り、敷地内で記念撮影、頼めば山口組関係者がシャッターを押す。

子どもたちが「イェーイ」と山口組関係者に両手でハイタッチ。これに若い山口組関係者も「イェーイ」とにこやかにハイタッチで応じ、「お菓子もらって写真撮ってね」と子どもたちに声掛けする。

世間では「神戸山口組」との分裂や、そこからさらに分裂した「任侠山口組」との抗争を心配する向きもあるが、そんな恐ろしさとは切り離された、異様になごやかなハロウィンの光景がそこにはあった。

● 高価で大量のお菓子を配布 大喜びする子どもたち

毎年、山口組のハロウィンにやって来るというエリナちゃん(小5)母子に聞いた。

「なんか大変みたいですね。でも、山口組さんも長年、近隣住民として、ここにいらっしゃるわけですから。“お仕事”のことは、ちょっと私たちにはわからないです」

クリームベージュのレザーのブレザー、白のTシャツ、黒のタイトスカートと「高級住宅地」に住む神戸マダムらしいファッションに身を包んだエリナちゃんのお母さんがこう話す傍らで、袋詰めの菓子を開けたエリナちゃんは、「ママ、すごい!今年も、こんだけある!!」と大はしゃぎ。記者にも、その袋の中を見せてくれた。

エリナちゃん母子によると、今年は、例年配られる数点の袋詰めの菓子に加えて「綿あめ」も付いていた。その袋詰めの菓子のなかには、「山口組」を示すモノは一切、入っていない。これは恐らく「暴力団対策法」「暴力団排除条例」を意識したものだろう。

記者がエリナちゃん母子の話を聞いている横で、やはり、“山口組さん”のハロウィンにやってきた近隣の男子小学生たち3人組も、「大漁や!すごい!!」「めっちゃ多いやん!」と喜びの声を上げていた。その声を受けて大笑いしながら、エリナちゃんのお母さんが記者に補足説明するように語ってくれた。

「どこも伝えていませんけど、この地域のハロウィンは、別に山口組さんだけやないんですよ。近隣の民家とかでも配っています。ただね、山口組さんはその量が多くて、ほんと大量…。高価なモノを配ってはるんです。だから子どもたちも大喜びなんです」

これを「暴力団である山口組が地域住民の取り込みを図った」と見るか、「一住民として、地域に貢献している」と見るかは意見の分かれるところだが、少なくとも近隣住民の間では長年、指定暴力団である山口組を、地域に存在する「全国的にも著名な団体」として、一定の親しみを持って受け入れているという現実がある。

参照元 : ダイヤモンドオンライン


山口組のハロウィン、厳戒態勢の中ではしゃぐ子どもたち(下)

2017.11.4

発足時は市民に必要とされた
山口組の歴史とは

山口組が発足したのは1914年、大正時代の終わりである。初代組長の山口春吉氏は、港町・神戸で、港湾荷役業を軸とする現在でいうところの「人材派遣業」を行っていた。



もちろん当時と今とは時代も社会も違うが、荒くれ者が多かった港湾荷役業に携わる男たちを束ねることは容易ではない。問われるのは何者をも心服させる“調整力”だ。この調整力を活かして、初代組長の長男で二代目組長・山口登氏は芸能界へと進出。「山口組興行部」を立ち上げた。兵庫県警関係者が語る。

「戦後、神戸芸能社として発展する山口組興行部は、今、放映中のNHKの朝ドラ『わろてんか』の主人公・吉本興業創業者の吉本せい氏の依頼を受けて、吉本興行所属俳優が業界のルールに反し、他社の映画に出演すると言い出したことに端を発するトラブルの収拾にあたったことで知られています」

このトラブル収拾時に直接、他社との交渉に当たった山口登組長は、全身18ヵ所を切られる重傷を負い、その傷がもとで3年後に死亡する。利権を巡るトラブルに暴力が用いられることがごく当たり前の業界で、ある意味、時代に必要とされて誕生した組織が、現在はヤクザと呼ばれ、警察から「暴力団」として指定されているということだ。

世間では山口組をはじめ、暴力団とかヤクザといえば――こうした組織に属する人たちは〈任侠〉という言い方をする――それを「職業」としていると思いがちだが、これはあくまでも親分と子分を軸とする人間的繋がり、いわばプライベートでの「サークル」であって職業ではない。

だから、暴力団対策法が施行される以前の時代では、山口組をはじめとする、現在は指定暴力団とされている組織に属する人たちも、日常では実業家であったり、会社員であったりした。今ではとても考えられないが、調整力のある「町の顔役」として、町の祭事を仕切ったり、些細なトラブル収拾などにも当たっていたことから、議員になった者もいるくらいだ。

実際、3代目組長・田岡一雄氏も、プライベートでは山口組組長だが、職業人としては芸能プロダクションや港湾荷役業に携わっており、神戸市の公職にも就いていた。

山口組をはじめ、ヤクザと呼ばれる組織に属する人たちへの接し方が変わってきたのは、経済白書が「もはや戦後ではない」と伝えた昭和30年代頃からといわれている。

和やかな風景の陰で厳戒態勢
私服警官も目を光らせる

この頃を境目に、山口組関係者の間では時代の空気を敏感に感じ取り、「プライベート」と「オフィシャル」をきっちり分け、企業活動に専念する者は組織を抜けるといった措置が取られるようになったという。

同時に、戦後すぐの時代の混乱期には不良外国人を成敗してくれるなど、市民生活の安全に貢献してくれた“山口組さん”という「個人サークル」も、「ヤクザ」「暴力団」と呼ばれるようになり、市民の見る目も変わっていった。今では山口組に寛容なのは、この総本部のある灘区周辺だけだという声も神戸市民の中には数多い。

阪神大震災で大打撃を受けた神戸市長田区に住む50代男性は言う。



「高級住宅地でもある総本部なら心配ないだろうけど、長田ではこの前、“山口組さん”から割れた組の関係者が発砲事件を起こしたし。やっぱり怖いですわ」

さて、総本部前では18時を超え来訪者は約600人を超えた。敷地外の道路上には仮装した子どもとその母親たち、カップルらが、列をなしてやってくる。賑わいは最高潮といったところだ。

  「兵庫県警のXと申します。先程、敷地内に入られていましたね。どんな話をされましたか?」

サラリーマン風のスーツ姿の男が、いきなり警察手帳を見せながら記者に声をかけてきた。何人かの私服警察官が、トラブルの際に備えて目を光らせていたことが、今更ながらわかった。

余談はさておき読者のなかには、山口組がハロウィンを行っていることそのものに、疑問を持つ向きもいるかもしれない。これについてある兵庫県警関係者は次のように語る。

「昔から行われている周知の事実、かつ敷地内で行われていること。これをもって違法行為とはいえません。とはいえ、何かあった際に備えて警戒はしています」

18時46分、山口組総本部のシャッターが閉まる。用意していた1000個のお菓子がすべてはけたのだ。やってきた小学生に山口組関係者はこう声をかけた。

「ごめんね。もう終わってもてん。また来年ね…。ほんまにごめんね」

同時に、兵庫県警の捜査員が、「18時46分終了」と声を張り上げた。山口組敷地内ではガラガラと撤収の音が聞こえてくる。18時57分、勝手口から山口組関係者が出てきて、報道陣、兵庫県警関係者のいる方向に向かって言った。「終了です」。約3時間に渡って行われた今年の山口組のハロウィンは、事故なく終わった。

今年は発砲事件もあったが、地元民のほとんどが、「あれは“山口組さん”とは今は関係のないところだから」と何ら気にしていない。それで納得してしまう。昔から脈々と続いてきた“山口組さん”と地域のつながりは、今も健在なのだ。

しかし、暴力団を許さない流れに変わってきた現代、ハロウィンのお菓子配りというのどかな行事にも、警察官が厳戒態勢を敷きマスコミが殺到するようになった。和やかさと不穏さが奇妙な形で混在しているのが、今の山口組と地域住民の関係なのだろう。

神戸生まれ・育ちの記者にとっては、それも「おなじみの雰囲気」なのだが、時代は確実に暴力団排除に舵を切っている。“山口組さんのハロウィン”はいつまで続くのだろうか?

参照元 : ダイアモンドオンライン


山口組で「ハッピーハロウィーン」 組員が仮装、菓子手渡し

2017/10/31(火) 18:32配信



指定暴力団山口組の組員が31日夕、ハロウィーンに合わせて神戸市灘区篠原本町4の総本部前で子どもたちに菓子を配った。

対立する指定暴力団神戸山口組(淡路市)に対してはこの日、地元住民が求めていた本拠地事務所の使用を禁止する仮処分が決定するなど、暴力団排除の機運が高まる中、住民の懐柔を図ったとみられる。

捜査関係者らによると、菓子の配布は同日午後4時10分ごろから約3時間あった。組員らが総本部の入り口前で、スナック菓子の入った袋や本部内で作った綿菓子を手渡した。

入り口付近はカボチャやおばけのバルーン、紫とオレンジのイルミネーションで飾られ、組員らは「ハッピーハロウィーン」「お菓子もらって、写真を撮ってね」などと声を掛けていた。

山口組は毎年、ハロウィーンに合わせて菓子を配布している。神戸山口組との分裂騒動があった2015年は中止したが、昨年は総本部近くの神社で再開。今年は子どもと保護者ら約800人(兵庫県警調べ)が訪れ、捜査員が周辺でトラブル警戒に当たった。

参照元 : 神戸新聞NEXT

動画 → 山口組で「ハッピーハロウィーン」 組員菓子配る










山口組ハロウィーン盛況で波紋 兵庫県警「暴排の意味考えて」

2017/11/9(木) 22:11配信

ハロウィーンの10月31日、兵庫県の指定暴力団山口組の組員らが神戸市灘区の総本部で菓子を配った。兵庫県警は「青少年に悪影響を与える」として山口組側に再三中止を要請したが、約800人が行列。神戸地裁が同日、指定暴力団神戸山口組に対し本拠地事務所(淡路市)使用禁止の仮処分を認めるなど、県内では暴力団排除に向けた動きが盛り上がっているだけに、暴力団追放運動の関係者からは「暴力団に寛容な雰囲気が広がるのでは」と危機感を募らせる。

31日午後4時、総本部駐車場はカボチャの巨大模型やイルミネーションで彩られ、お化けなどに仮装した組員が子どもたちに菓子詰め袋を手渡す。保護者らしき大人も受け取っていた。

捜査関係者によると、県警は4年前に山口組によるハロウィーンイベントを確認。分裂騒動のあった2015年を除き毎年開かれている。設営など今年は一層豪華といい、訪れた人数も過去最多とみられる。

暴力団追放に取り組む「灘区を明るくする区民運動連絡協議会」の男性役員は「会合などで参加しないよう呼び掛けていたのに」と落胆する。

ただ、「異例の大盤振る舞いは、焦りの裏返しではないか」とも。

分裂騒動後、総本部周辺では住民らが「暴力団追放」の看板を掲げ、県警が常時監視する特別警戒所を設置。昨年8月の追放パレードでは、約200人が「解散せよ」との掛け声を総本部へ響かせた。

今年10月20日、福井地裁が山口組系事務所の使用禁止を認める仮処分を決定。神戸地裁でも同様の決定が出ることが予想されていただけに、男性役員は今回のイベントについて「そうした状況への危機感が影響したのでは」と指摘する。

山口組総本部は1963年、3代目組長が住居を構え、80年代に起きた一和会との「山一抗争」では活動拠点となった。当時を知る80代の男性は「本当に物騒だった。今も、いつか事件に巻き込まれるのではないかと不安だ」と明かす。

一方、イベントに訪れた多くは抗争を知らない世代だ。30代女性は「物心が付いた時から身近にあるので怖い印象はない」と言う。

県警によると、暴力団からの物品受け取りを禁じる条例などはないという。ただ、今回は子どもを巻き込んだイベントだけに、県警幹部は「犯罪収益を原資とする暴力団から便宜を受けて本当にいいのかどうか。大人たちは考えてほしい」とくぎを刺した。

参照元 : 神戸新聞NEXT








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