異例会見の任侠山口組、組織分断と切り崩し狙いか 神戸山口組批判「真の山口組を再構築する」
2017/8/29(火) 16:56配信
指定暴力団神戸山口組から離脱した任侠山口組が27日、兵庫県尼崎市の組事務所で記者会見を開いた。任侠山口組の会見は4月30日の結成表明に続き2回目で、幹部らが報道関係者に資料を配り、神戸山口組のトップや組織運営を改めて批判した。
会見は任侠山口組の池田幸治本部長が率いる直系組織「真鍋組」の事務所で実施。池田本部長ら幹部計6人が出席したが、織田絆誠代表は出席しなかった。
前回会見では新聞や雑誌の記者に限られたが、今回はテレビ局記者の参加を認めた。池田本部長が約40人の報道関係者を前に資料を約30分間、一方的に読み上げ、質疑には応じなかった。
会見で池田本部長は任侠山口組の結成理由について、神戸山口組の井上邦雄組長が幹部から提案された組織改編などの改革案を拒否した-などと改めて主張。2015年8月27日の神戸山口組の結成についても「大型分裂詐欺事件」と批判し、「我らが再度立ち上がり、真の山口組を再構築する」と述べ、今後の神戸山口組の対応を見て3回目の会見を開く可能性を示唆した。
暴力団による会見は1984年、山口組の4代目組長人事に反発する直系組長らで組織された一和会が結成時に開いたが、山口組と神戸山口組は報道関係者との接触を原則的に禁止している。
捜査関係者によると、任侠山口組は2日前の25日、報道関係者に会見開催を通知。前日の26日には暴力団関係者らにも「御通知」と題し、会見開催と会見要旨を告知していたという。
ある暴力団関係者は「任侠山口組は他団体との組織的な付き合いがないため、暴力団社会に自分たちの正当性を主張する場として会見を開いているのではないか。山口組分裂2年の報道が出るこの時期に合わせ、井上組長を改めて批判することで神戸山口組の組織分断や切り崩しをかける狙いもあるとみられる」と話している。
参照元 : 夕刊フジ
山口組が3分裂:激変するヤクザの世界
2017/9/8(金) 14:36配信
日本最大の指定暴力団「山口組」が3つに分裂した状態になって、4カ月が過ぎた。かつてだったら報復が報復を呼び、あっという間に血で血を洗う一大抗争になっていてもおかしくない状況だが、取り締まりの強化や法律の整備もあって、表面上はお互いがうかつに手を出せない膠着状態が続く。それでも水面下では、静かに地殻変動が進んでいるのは間違いない。分裂によって日本の暴力団はどう変わったのか。
盤石の体制を誇ってきた山口組が分裂し、日本のヤクザ社会の力学が変わりつつある。
「六代目山口組」から2015年8月末に分裂した「神戸山口組」、さらに神戸山口組から今年4月末に分裂した「任侠(にんきょう)山口組」、という3団体の対立関係が続いている。ただ、暴力団対策法などの法整備が進んだ現状では、それぞれが全面的な武力衝突に至れば、お互いの組織壊滅につながりかねず、基本的には小競り合い程度で大きな衝突は起きていない。不思議な“均衡状態”が保たれている状態だ。
「2年前に分裂してからは、ものすごく気を使っている。とにかく神戸山口組と変なことでぶつからないように、酒を飲みに行く回数も劇的に減った。行く場所がないから自宅や事務所、知人の会社とかで缶ビールを飲むばかり。たまに外に行っても親戚の店や若い衆の内妻の店とか、内輪の範囲ですよ」
こうぼやくのは、六代目山口組傘下の組員だ。対立関係にある神戸山口組傘下の組員も、こう語る。
「最近は、飲みやカラオケなども、もっぱら昼間。夜はトラブルに巻き込まれやすいからと、窮屈で仕方ない。夜は夜で突発的なもめ事で対応をしなきゃいけないこともあるし、ゆっくり寝ていられない。携帯電話を常に枕元に置いている」
山口組分裂をめぐる経緯
「分裂」がもたらした西vs東の対立構図
警察庁の統計などによると、2年前の分裂以降、六代目山口組と神戸山口組による抗争事件は約100件。組事務所へのダンプカー突入事件(16年3月)や、神戸山口組傘下組織の幹部が射殺される事件(同5月)などが起き、逮捕者は計2000人に及ぶ。
今年6月6日には、兵庫県警が神戸山口組の井上邦雄組長を、4年前に知人女性名義で携帯電話を機種変更したという“微罪”で逮捕し、その後、京都府警が1月に起きた別の傷害容疑で再逮捕した。井上組長は7月に処分保留で釈放されたが、警察当局が執拗(しつよう)に攻勢を強めているのは、30年前の「山一抗争」(1985~87年)の記憶があるからだろう。
山口組の後継争いから組織が分裂し、山口組四代目射殺事件に発展した山一抗争は、終結までに全国で約320件の対立事件が発生し、一般市民を含め95人が死傷した。ただ、このときと違うのは、当時山口組から離脱した「一和会」が賛同組員の切り崩しに遭い、勢力を失っていったのに対し、今回の分裂では離脱した神戸山口組が一定の勢力を保っていることだ。
警察庁の統計によると、16年末時点で、分裂後の六代目山口組の構成員は依然として全国最大の約5200人、神戸山口組も約2600人(任侠山口組の離脱前)と全国で3番目の規模を誇る。神戸山口組の中心は、従来の山口組の最大派閥だった山健組であり、組を象徴する紋章の「代紋」も変更せず、自ら“本流”を主張している。
全国の指定暴力団(22団体)
※警察庁組織犯罪対策部「平成28年における組織犯罪の情勢」などから作成。データは2016年末時点
離脱派の力が温存された理由の一つは、全国の友好団体への根回しがうまくいったこともあるだろう。『王国の崩壊―山口組分裂の深層』などの著書がある元山口組系幹部で作家の桜井健治氏は、「関西から西は、神戸山口組に親近感を持っている組が多い」と語る。大阪の九代目酒梅組や岡山の五代目浅野組などは、これまで六代目山口組の親戚団体(同盟関係)だったが、分裂後は神戸山口組に近づいているという。
一方、六代目山口組は分裂後、東日本の団体との友好関係を深める方針を強めているという。「分裂前、関東の組織は山口組に対抗意識を持っていましたが、それが消えつつあります。もともと友好団体だった稲川会、松葉会が仲介し、住吉会も六代目山口組との距離を縮めた。内部には神戸派も少なからずいて異論も出ているものの、表面的には落ち着いています」(桜井氏)
大きな構図として、分裂の結果、関西を中心として西vs東の対立構造が押し進められた形だが、「暴対法や暴力団排除条例に加え、この7月に施行されたテロ等準備罪(いわゆる共謀罪)が現実的な脅威となって身動きが取れない状況になっている」(桜井氏)という。表向き抗争ができないこの状況が、ある意味、“力の均衡”を生んでいるのも事実だろう。
変質するヤクザの「掟」
こうした流れのなかで、ヤクザ社会の「掟」まで変質されようとしている。
ヤクザ組織をヤクザ組織たらしめているのは「直参(じきさん)制度」である。直参とはもともと、江戸時代の徳川幕府に直属した旗本・御家人のことを言うが、ヤクザの世界では親分から直接「盃」(さかずき)を受けた組員のことを指す。暴力団社会では盃によって「親子」あるいは「兄弟」の擬似的な血縁関係を結び、絶対的な関係性を固めている。
所属していた組の親分から盃を受けながら組を割って出るのは、いわゆる「盃を返す(逆盃)」行為で、親分が絶対であるヤクザ社会では認められない。ただ、それを乗り越える「大義」がある、というのが離脱派の主張だ。六代目山口組は、離脱した神戸山口組の幹部らを「絶縁処分」とし、神戸山口組はさらに離脱した任侠山口組の幹部らを「絶縁処分」とした。
本来、ヤクザ組織において「絶縁」「破門」は追放処分であり、処分を受けた者はヤクザ社会では生きていけなくなる。処分を受けた者と付き合えば、それはすなわち、処分をした組への敵対行為とみなされるためだ。それがヤクザ社会の「鉄の掟」であり、その厳格なルールのもとで秩序が保たれてきた面がある。
ところが、一連の山口組の分裂によって、この秩序が崩壊しかねない状況に陥っている。先の桜井氏が指摘する。「これまで破門、絶縁は絶対的なケジメでした。それが、何の効力もなくなってしまった。破門されようが絶縁されようが、対立組織に行けば迎えてもらえる。破門も絶縁も怖くなくなれば、もうやりたい放題です。もはやルールが変わってしまった。このタガがはずれてしまったことは不安要素です」。
もめ事をしているヒマはない
加えて、現在どこの暴力団も苦しんでいるのが組織力の低下だ。全体状況としては、捜査当局の集中的な取り締まりなどによって全国の暴力団の規模は縮小の一途をたどっている。1990年代初頭に7万人近くいた暴力団構成員の人数は、2016年末時点で1万8100人。かつて準構成員も含めて「4万人軍団」と言われた山口組は、分裂の影響もあって約4分の1まで勢力が落ち込んだ。
絶対的な人数が減っている上に、分裂がさらに追い打ちをかけた。組員からは、こんな声も漏れる。
「いつどんなきっかけで抗争になるかわからないから頭数の確保は重要なのだが、うちの事務所でも組員はピーク時の5分の1以下という有り様。本家の駐車場当番に人を出せないという直参の組も、いくつもある」(六代目山口組)
「こっちでも、山健組の一部が離脱して任侠山口組となり、士気の低下は事実。人数も足りていなくて、幹部でも子分が数人、という人がいる状況だ」(神戸山口組)
こうした窮状に、現場の組員たちの間では「無駄にもめても何もいいことない」という意識が強まっているようだ。六代目山口組傘下のある組員が語る。
「割れたのは上の意向で、下は関係ないし、よく分からない。もめそうになっても、現場同士で話せばお互い本音は同じだからスムーズだし、みんな同じ業界だからどこかで兄弟分の知り合いとつながるのがヤクザの世界や」
例えば、この時期ならば夏祭りの屋台などの商売に行くと結局、六代目山口組、神戸山口組、任侠山口組が呉越同舟で営業していることもあるという。
「法律が厳しくなってマーケットがどんどん小さくなっている中、ヤクザ同士でもめ事をしているヒマはなくて、組織は違っても現場は結束という感じもある」
神戸山口組の組員も、思いは同じだ。
「現場レベルでは六代目山口組と“共存共栄”って感じです。暗黙の了解というのかな。街で会っても、お互い目で合図して事を荒立てないようにする。うちも向こうも、任侠山口組も代紋は同じ。だったら、ケンカはやめて早く一つに戻ってほしいですよ。もうお互いにいがみ合っているのではなく、ヤクザという一つのカテゴリーで物事を考えなければいけない気がします」
取材・文:POWER NEWS編集部
バナー写真:指定暴力団「六代目山口組」のトップ、司忍(本名・篠田建市)組長=2011年4月9日、神戸市のJR新神戸駅(時事)
参照元 : nippon.com
2017/8/29(火) 16:56配信
指定暴力団神戸山口組から離脱した任侠山口組が27日、兵庫県尼崎市の組事務所で記者会見を開いた。任侠山口組の会見は4月30日の結成表明に続き2回目で、幹部らが報道関係者に資料を配り、神戸山口組のトップや組織運営を改めて批判した。
会見は任侠山口組の池田幸治本部長が率いる直系組織「真鍋組」の事務所で実施。池田本部長ら幹部計6人が出席したが、織田絆誠代表は出席しなかった。
前回会見では新聞や雑誌の記者に限られたが、今回はテレビ局記者の参加を認めた。池田本部長が約40人の報道関係者を前に資料を約30分間、一方的に読み上げ、質疑には応じなかった。
会見で池田本部長は任侠山口組の結成理由について、神戸山口組の井上邦雄組長が幹部から提案された組織改編などの改革案を拒否した-などと改めて主張。2015年8月27日の神戸山口組の結成についても「大型分裂詐欺事件」と批判し、「我らが再度立ち上がり、真の山口組を再構築する」と述べ、今後の神戸山口組の対応を見て3回目の会見を開く可能性を示唆した。
暴力団による会見は1984年、山口組の4代目組長人事に反発する直系組長らで組織された一和会が結成時に開いたが、山口組と神戸山口組は報道関係者との接触を原則的に禁止している。
捜査関係者によると、任侠山口組は2日前の25日、報道関係者に会見開催を通知。前日の26日には暴力団関係者らにも「御通知」と題し、会見開催と会見要旨を告知していたという。
ある暴力団関係者は「任侠山口組は他団体との組織的な付き合いがないため、暴力団社会に自分たちの正当性を主張する場として会見を開いているのではないか。山口組分裂2年の報道が出るこの時期に合わせ、井上組長を改めて批判することで神戸山口組の組織分断や切り崩しをかける狙いもあるとみられる」と話している。
参照元 : 夕刊フジ
山口組が3分裂:激変するヤクザの世界
2017/9/8(金) 14:36配信
日本最大の指定暴力団「山口組」が3つに分裂した状態になって、4カ月が過ぎた。かつてだったら報復が報復を呼び、あっという間に血で血を洗う一大抗争になっていてもおかしくない状況だが、取り締まりの強化や法律の整備もあって、表面上はお互いがうかつに手を出せない膠着状態が続く。それでも水面下では、静かに地殻変動が進んでいるのは間違いない。分裂によって日本の暴力団はどう変わったのか。
盤石の体制を誇ってきた山口組が分裂し、日本のヤクザ社会の力学が変わりつつある。
「六代目山口組」から2015年8月末に分裂した「神戸山口組」、さらに神戸山口組から今年4月末に分裂した「任侠(にんきょう)山口組」、という3団体の対立関係が続いている。ただ、暴力団対策法などの法整備が進んだ現状では、それぞれが全面的な武力衝突に至れば、お互いの組織壊滅につながりかねず、基本的には小競り合い程度で大きな衝突は起きていない。不思議な“均衡状態”が保たれている状態だ。
「2年前に分裂してからは、ものすごく気を使っている。とにかく神戸山口組と変なことでぶつからないように、酒を飲みに行く回数も劇的に減った。行く場所がないから自宅や事務所、知人の会社とかで缶ビールを飲むばかり。たまに外に行っても親戚の店や若い衆の内妻の店とか、内輪の範囲ですよ」
こうぼやくのは、六代目山口組傘下の組員だ。対立関係にある神戸山口組傘下の組員も、こう語る。
「最近は、飲みやカラオケなども、もっぱら昼間。夜はトラブルに巻き込まれやすいからと、窮屈で仕方ない。夜は夜で突発的なもめ事で対応をしなきゃいけないこともあるし、ゆっくり寝ていられない。携帯電話を常に枕元に置いている」
山口組分裂をめぐる経緯
「分裂」がもたらした西vs東の対立構図
警察庁の統計などによると、2年前の分裂以降、六代目山口組と神戸山口組による抗争事件は約100件。組事務所へのダンプカー突入事件(16年3月)や、神戸山口組傘下組織の幹部が射殺される事件(同5月)などが起き、逮捕者は計2000人に及ぶ。
今年6月6日には、兵庫県警が神戸山口組の井上邦雄組長を、4年前に知人女性名義で携帯電話を機種変更したという“微罪”で逮捕し、その後、京都府警が1月に起きた別の傷害容疑で再逮捕した。井上組長は7月に処分保留で釈放されたが、警察当局が執拗(しつよう)に攻勢を強めているのは、30年前の「山一抗争」(1985~87年)の記憶があるからだろう。
山口組の後継争いから組織が分裂し、山口組四代目射殺事件に発展した山一抗争は、終結までに全国で約320件の対立事件が発生し、一般市民を含め95人が死傷した。ただ、このときと違うのは、当時山口組から離脱した「一和会」が賛同組員の切り崩しに遭い、勢力を失っていったのに対し、今回の分裂では離脱した神戸山口組が一定の勢力を保っていることだ。
警察庁の統計によると、16年末時点で、分裂後の六代目山口組の構成員は依然として全国最大の約5200人、神戸山口組も約2600人(任侠山口組の離脱前)と全国で3番目の規模を誇る。神戸山口組の中心は、従来の山口組の最大派閥だった山健組であり、組を象徴する紋章の「代紋」も変更せず、自ら“本流”を主張している。
全国の指定暴力団(22団体)
※警察庁組織犯罪対策部「平成28年における組織犯罪の情勢」などから作成。データは2016年末時点
離脱派の力が温存された理由の一つは、全国の友好団体への根回しがうまくいったこともあるだろう。『王国の崩壊―山口組分裂の深層』などの著書がある元山口組系幹部で作家の桜井健治氏は、「関西から西は、神戸山口組に親近感を持っている組が多い」と語る。大阪の九代目酒梅組や岡山の五代目浅野組などは、これまで六代目山口組の親戚団体(同盟関係)だったが、分裂後は神戸山口組に近づいているという。
一方、六代目山口組は分裂後、東日本の団体との友好関係を深める方針を強めているという。「分裂前、関東の組織は山口組に対抗意識を持っていましたが、それが消えつつあります。もともと友好団体だった稲川会、松葉会が仲介し、住吉会も六代目山口組との距離を縮めた。内部には神戸派も少なからずいて異論も出ているものの、表面的には落ち着いています」(桜井氏)
大きな構図として、分裂の結果、関西を中心として西vs東の対立構造が押し進められた形だが、「暴対法や暴力団排除条例に加え、この7月に施行されたテロ等準備罪(いわゆる共謀罪)が現実的な脅威となって身動きが取れない状況になっている」(桜井氏)という。表向き抗争ができないこの状況が、ある意味、“力の均衡”を生んでいるのも事実だろう。
変質するヤクザの「掟」
こうした流れのなかで、ヤクザ社会の「掟」まで変質されようとしている。
ヤクザ組織をヤクザ組織たらしめているのは「直参(じきさん)制度」である。直参とはもともと、江戸時代の徳川幕府に直属した旗本・御家人のことを言うが、ヤクザの世界では親分から直接「盃」(さかずき)を受けた組員のことを指す。暴力団社会では盃によって「親子」あるいは「兄弟」の擬似的な血縁関係を結び、絶対的な関係性を固めている。
所属していた組の親分から盃を受けながら組を割って出るのは、いわゆる「盃を返す(逆盃)」行為で、親分が絶対であるヤクザ社会では認められない。ただ、それを乗り越える「大義」がある、というのが離脱派の主張だ。六代目山口組は、離脱した神戸山口組の幹部らを「絶縁処分」とし、神戸山口組はさらに離脱した任侠山口組の幹部らを「絶縁処分」とした。
本来、ヤクザ組織において「絶縁」「破門」は追放処分であり、処分を受けた者はヤクザ社会では生きていけなくなる。処分を受けた者と付き合えば、それはすなわち、処分をした組への敵対行為とみなされるためだ。それがヤクザ社会の「鉄の掟」であり、その厳格なルールのもとで秩序が保たれてきた面がある。
ところが、一連の山口組の分裂によって、この秩序が崩壊しかねない状況に陥っている。先の桜井氏が指摘する。「これまで破門、絶縁は絶対的なケジメでした。それが、何の効力もなくなってしまった。破門されようが絶縁されようが、対立組織に行けば迎えてもらえる。破門も絶縁も怖くなくなれば、もうやりたい放題です。もはやルールが変わってしまった。このタガがはずれてしまったことは不安要素です」。
もめ事をしているヒマはない
加えて、現在どこの暴力団も苦しんでいるのが組織力の低下だ。全体状況としては、捜査当局の集中的な取り締まりなどによって全国の暴力団の規模は縮小の一途をたどっている。1990年代初頭に7万人近くいた暴力団構成員の人数は、2016年末時点で1万8100人。かつて準構成員も含めて「4万人軍団」と言われた山口組は、分裂の影響もあって約4分の1まで勢力が落ち込んだ。
絶対的な人数が減っている上に、分裂がさらに追い打ちをかけた。組員からは、こんな声も漏れる。
「いつどんなきっかけで抗争になるかわからないから頭数の確保は重要なのだが、うちの事務所でも組員はピーク時の5分の1以下という有り様。本家の駐車場当番に人を出せないという直参の組も、いくつもある」(六代目山口組)
「こっちでも、山健組の一部が離脱して任侠山口組となり、士気の低下は事実。人数も足りていなくて、幹部でも子分が数人、という人がいる状況だ」(神戸山口組)
こうした窮状に、現場の組員たちの間では「無駄にもめても何もいいことない」という意識が強まっているようだ。六代目山口組傘下のある組員が語る。
「割れたのは上の意向で、下は関係ないし、よく分からない。もめそうになっても、現場同士で話せばお互い本音は同じだからスムーズだし、みんな同じ業界だからどこかで兄弟分の知り合いとつながるのがヤクザの世界や」
例えば、この時期ならば夏祭りの屋台などの商売に行くと結局、六代目山口組、神戸山口組、任侠山口組が呉越同舟で営業していることもあるという。
「法律が厳しくなってマーケットがどんどん小さくなっている中、ヤクザ同士でもめ事をしているヒマはなくて、組織は違っても現場は結束という感じもある」
神戸山口組の組員も、思いは同じだ。
「現場レベルでは六代目山口組と“共存共栄”って感じです。暗黙の了解というのかな。街で会っても、お互い目で合図して事を荒立てないようにする。うちも向こうも、任侠山口組も代紋は同じ。だったら、ケンカはやめて早く一つに戻ってほしいですよ。もうお互いにいがみ合っているのではなく、ヤクザという一つのカテゴリーで物事を考えなければいけない気がします」
取材・文:POWER NEWS編集部
バナー写真:指定暴力団「六代目山口組」のトップ、司忍(本名・篠田建市)組長=2011年4月9日、神戸市のJR新神戸駅(時事)
参照元 : nippon.com
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