2017年10月28日土曜日

元暴力団組員「思っていた世界と全然違った」生活が苦しくなった組員から組織を離脱したいという相談増加

元組員語る「憧れた世界」と現実 暴力団離脱の相談増加

2017/10/28(土) 8:21配信



福井県暴力追放センターが設立から25年を迎えた。20日には県内二つの暴力団事務所の使用を禁止する福井地裁の仮処分決定を勝ち取るなど、県警、弁護士などと連携しながら、さまざまな形で暴力団の排除に取り組んでいる。2011年の県暴力団排除条例施行を機に、生活が苦しくなった組員から組織を離脱したいという相談が増えてきており、「究極の暴排」とされる元組員の社会復帰の支援にも力を入れている。ただ、本人に働く意欲がない、受け入れる企業が少ないなど課題は多い。

「思っていた世界と全然違った」。県内の40代元組員は、苦しかった暴力団での生活をこう振り返る。

高級車に乗り、派手な洋服に身を包む、映画で描かれるような生活に憧れていた。しかし、待っていたのは肉体労働のアルバイトの日々。日当の半分近くを組に吸い上げられ、収入は月に10万円がやっと。その中から、組への上納金としてさらに月数万円を搾り取られた。家賃を支払うと手元にはほとんど残らず、親や知人からの借金に頼った。

辞めたかったが組織には言えず、警察に逮捕されたとき知り合った弁護士に組を抜ける意思を伝えた。弁護士が、センターや暴力団対策に詳しい別の弁護士に相談。警察も協力し、組長から離脱承認書を取り付けた。

元組員を受け入れている県内の会社で正社員として働くようになった。肉体労働で体力的には厳しいが、貯金に回せるだけの収入はある。「もうお金に困るのは嫌。普通の生活が一番」というのが率直な思いだ。

センターによると、暴力団からの離脱に関する相談は2012年から増え始めた。前年に暴力団への利益供与を禁じる県暴力団排除条例が施行。金融機関に口座を作れなくしたり、アパートを借りられなくしたり、携帯電話を契約できないようにしたりと、社会から暴力団を排除する取り組みが進んだ。センターの藤井寛之専務理事は「条例によって組員がいよいよ生活できなくなった」とみる。

相談の増加を受け、センターは組織からの離脱と社会復帰の推進に力を入れ始めた。脱退を希望する組員や関係者に必要な手続きを助言し、警察や弁護士に橋渡しする。離脱後、本人に就労意欲があればハローワークに同行。就職後は、県警OBの相談員が定期的に連絡を取り、組からの接触がないか確認している。

しかし、実際に組織を抜けて職に就いた先の元組員のような例はまれ。薬物の影響で体が弱っていたりして本人に働く意欲がないケースが多いという。 センターができる取り組みは、離脱を考えている組員らに相談してもらうための広報活動の強化や、就労意欲のある元組員を受け入れる企業の開拓だ。センターに協力を申し出ている企業は土木・解体業や廃棄物収集・中間処理業など3社しかなく、組員の選択の幅を広げたい考え。

組員が抜けるほど暴力団は弱体化する。藤井専務理事は「辞めた組員を組織に戻させないための社会復帰支援は、究極の暴排。暴力団を社会から排除する活動の支援と辞めた元組員の社会復帰の支援を、さらに推し進めたい」と力を込める。

参照元 : 福井新聞







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